以前、Koushiki Sansというフォントを作ったことがあって、趣味活動としてウェブサイトを作って配布していたのだけど、気がついたら10000ダウンロードを超えていた。面白がって作った個人的な制作物が、それだけ多くの人に届いたのは感慨深いし、嬉しいし、興味を持ってくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱいだ。
このフォントを公開した時、周囲の知り合い10人くらいが使ってくれればいいかなというくらいの感覚だったんだけど、蓋を開けてみると、日本だけでなく、海外からもダウンロードリクエストが届いて驚いた。海外を意識してものづくりをしたわけではない。日本国内で、日本語の思考回路で作ったものを、日本人を相手に配っている感覚だった。それが、ここから遠く離れた海外の人々の所まで届いた。最初は、不思議だなーと思っていた。
先日、PPAPがギネス認定されたときの記者会見でピコ太郎さんが「あとから気づいたんですけど、歌詞が英語だったんですね。」と仰っていたのを見て、あっ、これだ、と思った。僕も、作ったものがたまたま英語(アルファベット)だったから、勝手に言語の壁を超え、国境を越えて、想像していた以上に遠くまで届いたんだな。これは不思議な体験だったし、グローバルなものづくりって、案外こういう事なのかも知れないなとか思ったりした。
現在では、半分以上が海外の方からのダウンロードリクエストだ。そこには、フォントへの期待や感謝の言葉とともに、どういう用途で使いたいのか、メッセージが添えられている場合が多い。工業製品やソフトウェア、映像作品や音楽のCD、ポスター、グラフィックツールなど、プロフェッショナルの仕事の現場で。ポートフォリオや作品の制作など、未来のクリエーターが才能を研鑽するアートスクールで。カードづくりやカレンダー、アルバムの素材など、家庭の生活シーンの中で。メッセージによると、世界中の様々な場所で、このフォントが使われているらしい。想像するだけで夢が広がる。
フォントはフリーだけど、これを公開した事で得られた経験は、お金に換えられない価値があると思っている。ホント、作って良かったな。