BOOX Pageいい感じ

Kindle Oasisが好きすぎる僕ではあるが、画面の隅が表示されない端末を使い続けるのは、なかなか厳しいものがある。とはいえ、発売から5年が経とうとする第10世代を今から買い増すのは流石に躊躇する。

そんな感じで、隅の褪色した古書風Kindle Oasisを見つめながら、microUSB〜microUSB〜と呟き続ける毎日を送っていたところ、「KindleがダメならBOOXを買えばいいじゃない」と僕の中のマリー・アントワネットが声を上げた。

BOOXはePaperディスプレイを備えたAndroidタブレットで、これにKindleアプリをインストールすれば、Kindle端末のような読書体験が出来るらしい。しかも、Androidなので、Kindle以外のプラットフォームの電子書籍やブラウザのWebマンガも読む事ができる。って、いやいや、僕が欲しいのは次世代Kindle Oasisなんだぜ!と心の中で声が聞こえたような気がしたが、ebookjapanで全巻購入済みの横山光輝三国志がePaperで読めると分かり、即決した。

BOOX Pageがやってきた

スマホっぽい形状のBOOX Palmaにも心惹かれたけど、交差点でも夢の中でもKindle Oasisの姿を捜している僕としては、7インチディスプレイと物理ボタンを搭載しているBOOX Pageにした。

サイズや使用感はKindle Oasisに近くて、Kindle Oasisのような感覚で読書ができる。ディスプレイの美しさや挙動のスムーズさもKindle Oasisと同等か、それ以上の印象。Kindleアプリで行う電子書籍のダウンロードはKindle Oasisより早いと思う。また、microSDカードでストレージを拡張することも出来るので、大量の電子書籍を保存しておくことができる。最近読んでないから古めの本はダウンロードデータを消しておくかな、みたいなやりくりをする事なく、マンガを全巻保存し放題。まるで持ち歩くマンガ喫茶。そして何より、USB Type-Cなのが最高。

防水仕様ではないので、風呂に持って入ることは出来ない。とはいえ、IPX8等級の防水性能を持つKindle Oasisも流石に長風呂読書はダメなのではというアドバイスも頂いたが。

端末の保護については、専用カバーも販売されているけど、せっかく薄くて軽い端末なのだから、少しでも薄くて軽い状態で使いたい。でもそのままカバンに入れて持ち歩くのもちょっと不安。何か良いカバーはないかと悩んでいたところ、手近に転がっていたフロシキシキ Sに入れてみたら、思いの外しっくりきた。

ビニール製なのでクッション性は無いけど、擦れや引っ掻き傷からは保護してくれるはず。何より軽いのが良い。端末が透けて見えるのも、透明好きとしては、なんか嬉しい。

あと、買う前はそれほど気にしていなかったけど、実際に使ってみてめちゃくちゃ良いと感じたのは、専用アプリによってスクリーンセーバーがカスタマイズ出来るところ。スリープ状態の画面表示に自分の好きな画像を設定するだけで、こんなに愛着が湧くとは思わなかった。複数画像を設定すると、スリープする度に画像が変わって楽しい。早速、𝘴𝘩𝘪𝘳𝘵𝘴𝘬𝘪𝘳𝘵さんに描いてもらったイラストをスクリーンセーバーに追加した。10MB以下の画像であれば、ファイルを端末に送信して使用できる。

とはいえ、電子書籍を快適に読めるようにするためには、設定に一手間かける必要があって、その試行錯誤は少々面倒だった。あれこれ考えなくても、買ってすぐに最高の体験が得られるのは、Kindleに最適化されたKindle Oasisの強みだったんだなあと改めて感じた。というわけで、備忘録も兼ねて、以下に買ってからやったことメモを残しておこうと思う。

最初にやったこと

  • SDカードを入れる
    • 手近に転がっていた Samsung microSDXCカード EVO Plus 256GB を使用
    • 各種ダウンロード保存先をSDカードに設定
  • 設定(本体) > ファームウェアアップデート
    • 最新のものにアップデートしておく
  • アプリのインストール
    • Gboard - Google キーボード
      • 設定(本体) > 言語と入力 > 現在の入力方法 → Gboard
      • アプリ > Gboard > 言語
        • 日本語 → QWERTY
        • English (US) → PC
    • Google Chrome
      • アプリ > Chrome(アプリアイコンを長押し) > 管理
      • 詳細設定 > ブラウザアプリ → はい(デフォルトのブラウザアプリ)

設定タブ

画面下部(ファンクションタブ)の設定タブ

  • 設定(本体) > システム表示
    • ホームページのカスタム → アプリ
    • ファンクションタブにはアイコンのみ表示 → ON
      • アプリタブをメインで使うのでアプリを優先表示するようにした
  • 設定(本体) > サイドボタン
    • 推奨ボタン機能 → 組み合わせ2
      • 初期設定では「進む・戻る」がKindle Oasisと逆になっている
  • 設定(本体) > ジェスチャー
    • ボトムタブ > ジェスチャー:左下 → 全画面リフレッシュ
      • 画面に残像が残って見えにくい時など気軽にリフレッシュしたい

アプリタブ

画面下部(ファンクションタブ)のアプリタブ

  • アプリ > スクリーンセーバー > スクリーンセーバーのスタイル
    • 時計のタイプ → クロックなし
    • 画像を選択 → 好きな画像を設定
    • 表示テキスト → 表示なし
    • 下部のステータスバー → OFF
    • ズームスタイル → フルスクリーン
    • 画像の順序 → 順 or ランダム(この辺は好みや気分で)
  • アプリ > PushRead
    • RSSタブ > 購読する > カスタムタブ
    • グループの追加 > 新しいグループの名前をつけてOKボタン
    • 右上のフォルダ+っぽいアイコンを押してRSS登録を追加
      • 入力してください → RSSのURL
      • グループ → 先程登録したグループを選択
    • 2回目以降は以下の場所に登録導線がある
      • RSSタブ > ディレクトリボタン > 購読する
      • 連載を読んでいるWebマンガのRSSを登録しておくと便利
  • アプリ > (各種電子書籍アプリ) > 設定
    • ダウンロードの保存先をSDカードに
    • ページの向きを固定 → OFF
    • 音量ボタンでページをめくる → ON
    • ページめくりのアニメーション → OFF
  • 使わないプリインストールアプリはフォルダにまとめてスッキリさせた

コントロールセンター

画面右上から下にスワイプするとコントロールセンターが表示される

  • コントロールセンター > E-Inkセンター
    • 電子書籍アプリ(アプリ起動中に設定する)
      • ダークカラーエンハンス → 20 ぐらい
      • ライトカラーフィルタ → 15 ぐらい
      • リフレッシュモード → ノーマル
  • コントロールセンター > 自動回転 → ON
    • 横向きにした時に電子書籍が見開きで読めるようにしておく
  • コントロールセンター > ナビボール → OFF
    • ナビボールは消したいので非表示に

その他のメモ

  • SDカードスロットの穴だと思ってSIMピンをグイグイ押し込んでいた丸い部分は電源ボタンのランプだった。壊れる前に気づいて良かった。
  • サイドボタンを「ページめくり」に設定しているのにページめくりが効かなくて困った。「ページめくり」ではなく「音量」に設定して、電子書籍アプリ側で「音量ボタンでページをめくる」とするのが正しかった。
  • E-Inkで描画されるアニメーションはめっちゃ見にくいけど不思議な味わいがあってなんか楽しい。

まとめ

ePaperで横山光輝三国志を読む夢が叶った。

Kindle Oasisが好きすぎる

Kindle Oasisが好きすぎる僕たちは、次世代Oasisの登場をずっとずっと待っている。

しかし、なかなか次世代機が登場しないうちに、手持ちのKindle Oasisは壊れ、交換や買い替えを重ねること数回。気がつけば手元のKindle Oasisは5台目となっていた。

第11世代のKindle Oasisは未だ発表される気配がないけれど、5台目のKindle Oasisにも不調が見え始めたのを契機として、これまでの愛機たちの記録をここに残しておこうと思う。

一代目 Kindle Oasis「進撃の」

進撃の巨人の表紙を映したまま、動かなくなってしまったKindle Oasis。厳密にいうと、何度か動かそうとするものの、画面に線が増えるばかりで、最終的には線が増えることすらなくなってしまった。原型を残しつつも無機質な線に覆われたその佇まいは、硬質化した巨人のようでもある。

二代目 Kindle Oasis「グリッチアート」

ケーブルに繋いでも充電が出来なくなり、ついには電池切れ表示のまま動かなくなってしまったKindle Oasis。電池切れ表示とスクリーンセーバーと画面の線が相まってアート作品のよう。

三代目 Kindle Oasis「無題キンドルオアシス」

開封時よりディスプレイに小さな傷があり、初期不良品として交換していただくこととなったKindle Oasis。短い付き合いではあったものの、返送便を見送る時には、何となく切ない気持ちになった。

四代目 Kindle Oasis「白」

画面に何も映らなくなってしまったKindle Oasis。純白のスクリーンを見る機会はなかなか無いので貴重。

五代目 Kindle Oasis「ヴィンテージ」

スクリーンの隅が褪色して古書風になってしまったKindle Oasis。隅の黒ずんでいる部分は何も映らないので、この部分に描画される文字が読めなくて困ることも多い。

まとめ

画面が少しずつ見えなくなってきているにも関わらず、健気にローディングをしてくれている五代目Kindle Oasis。スクリーン隅の黒ずみは、少しずつ広がってきているように思える。意外と隅で見えなくなってしまう文字が多いので、買い換えることも検討したけど、もうしばらく五代目Kindle Oasisに頑張ってもらうことにした。五代目が壊れてしまうのが先か、それとも、第11世代Kindle Oasisが出るのが先か。

壊れても愛おしい。それがKindle Oasis。

補足

壊れたKindle Oasisの写真を集めた記事を書くことで、Kindle Oasisは壊れやすい端末であると印象付けてしまうかもしれないので、念のためにフォローの追記を。Kindle Oasisはとても良い機種で、スクリーンもボディも頑丈。とても使いやすい端末だと思う。

僕の用途は、風呂での読書用で、毎日のように風呂に持ち込んで、1時間くらい読むような感じ。IPX8等級の防水機能を備えた端末ではあるけど、できる限り浴槽に浸からないように配慮して、入浴後も十分に水切りをした。しかし、これだけ故障が続くと日常的に浴室で長時間利用するスタイルが、端末に負荷をかけてしまったのでは無いかと感じている。

多分、デスクやソファーで行う読書には問題なく使えるはず。IPX8らしいので、たまには水に濡らしても大丈夫ではないでしょうか。自信を持っておすすめするので、臆せず買っていただきたい。僕も、近い将来、六代目をお迎えしたいと思っている。

USB Type-Cが採用されるならすぐにでも。

現代的充電様式

夜、スマホを充電器に繋ぎっぱなしにする時代は、もう終わっていたようだ。

去年の秋頃からApple Watchで睡眠トラッキングをやっているんだけど、はじめは、丸一日バッテリーが持たないApple Watchを睡眠時まで着けっぱなしにできるわけがないと思っていた。ところが、同僚から「寝る前の隙間時間で充電すれば良い」とアドバイスを受けたので、家事などでバタバタするタイミングの21時頃から充電し、就寝前に着けるという方法を試したところ、とてもスムーズに運用することができた。充電時間は、案外、短いものだった。

そっか、隙間時間で充電できてしまうんだ。それに気付くと、いろいろ分かってきた。最近のデバイスは急速充電対応が謳われているけど、あれって、万が一、バッテリーが切れてしまってもすぐに充電できるよ!というものではなくて、スマホを繋ぎっぱなしにしなければいけない時間を無くすための試みだったんだな。そして、細切れの時間でもスムーズに充電するために、ワイヤレス充電は必要なんだ。

デバイスを繋ぎっぱなしにしなくていいとなると、利用スタイルがずいぶん変わってくる。デバイスが使えない時間帯みたいな考え方がそもそも要らなくなるし、Apple Watchのように、寝ている間も利用ができるということになる。この気付きは、冷静に考えれば当たり前のことかもしれないけど、寝ている間にデバイスを充電するスタイルに慣れきっている僕には、結構、目から鱗だった。

デバイスが使えない時間帯なんて発想はもう過去のもの。隙間時間に瞬時に充電するスタイルが現代的なのだ。

そう自分に言い聞かせて、僕はAnker GaNPrimeの充電器を衝動買いするのだった。

狙ったような偶然

子どものディズニートランプが何枚か無くなっていた。

多分、お気に入りのカードを、どこかに持って行って、遊んだままになっているのだろう。無くなっているのは、美女と野獣のベルと、リトル・マーメイドのセバスチャン。

ベル・アンド・セバスチャンだなって思った。

それではお聴きください。ベル・アンド・セバスチャンで『Nobody's Empire』

公私不可分

深夜、作業をしていたら、友達がゲームのライブ配信をしているのを見つけて、気分転換に視聴してみた。ヘッドホン越しにでも、しばらく会えていない友達の声を聞くと、それだけでうれしいし、懐かしいし、身近な感じがして、ライブ配信やポッドキャストは良いものだなと思った。

YouTubeとかポッドキャストとかライブ配信とか、これまでは、不特定多数に向けた情報発信みたいな印象が強かったんだけど、自分の身の回りプラスアルファくらいの範囲を意識して、お便り的に何かを発するみたいなスタイルもあるよなーと実感した。

コロナ禍でのWFHを通じて改めて感じたのは、仕事などのパブリックな側面とプライベートは不可分であるということ。これまでは職場など、場所によって行動に制約を課すことで、それらが線引きできているかのように思えていたが、実際はそんなに単純なものではなかったのではないか。そこにいないということで、対応の優先度を落としていただけではないか。

これからは、公私、そして様々なコンテキストを、切り分けるのではなく、全部引き受けながら、なめらかに社会とつながるみたいな、そんなライフスタイルやコミュニケーションのあり方が必要になると思う。プライベートに身を置きながら、声を通してパブリックとつながることもその一つだと思うし、これまで当たり前のように使っていた仕組みやサービスなども、見方や使い方を最適化することで、新しい世界が広がりそうに思えた。いろいろ模索していきたい。

それにしても、公私の不可分について考えさせてくれるきっかけとなったのが「距離」による制約だったというのは興味深い。前提となる制約が変わることで、初めて見えてくるものもある。

デザイングループのデザイン

デザイングループのデザイン

はじめに

組織づくりの話を聞きたい。そう言われることが増えてきました。

世の中にはいろんな会社があって、そこにはいろんなデザイナーが働いているわけですが、デザイナーの制作物や、チームでの個別の取り組みについて、話を聞くことはあっても、その前提となる組織全体の枠組みについては、突っ込んだ話を聞く機会が少ない気がします。

しかし、普段意識している以上に、僕たちの振る舞いは、身を置く環境の有り様に影響を受けています。あの会社が精力的にイベントを行っているのも、あのデザイナーが積極的に情報発信をしているのも、その根底には、それを後押しする組織の文化や思想があります。つまり、組織について知ることは、それを構成する人や取り組みについて知ることでもあります。そう考えてみると、組織づくりの話というのは、組織を作る人だけでなく、組織に属する人にとっても、有益なものなのかもしれません。

僕は、はてなのデザイナーが所属するデザイングループという組織で、プレイヤーとしてものづくりをしつつ、マネージャーとして組織づくりにも関わっています。最初は、そもそもグループの意義って何なんだ?という素朴な疑問について考えるところからスタートしましたが、日々、あれこれ考えたり、試行錯誤をしながら、より洗練されたかたちを目指して、今日も運用を続けています。まだまだ完成形は見えず、道半ばという感じですが、なかなか話す機会が無かった組織づくりについて、これまで考えてきたことを、ここにまとめてみようと思います。

組織づくりって一体何をやればいいんだ

事業やサービスの成長を目的とする開発グループと違って、職能グループはどういう目的を持つべきなんだろう。グループの枠組み作りは、まずはその目的に向き合うことから始めました。

はてなのデザイナーは、組織図上、サービス開発を行うグループと、デザイナーが集まる職能グループの両方に所属しています。基本的に、僕たちがこの会社で働く一番の意義は、ユーザーにとって価値があるサービスを作ることにあると思っているので、各々のリソースは、極力そこに使ってほしい。そのためには、デザイングループに所属することで業務上の負荷が増えるということは極力避けたい。追加の業務が降ってくる場所ではなく、所属することでメリットが得られる場所に出来ないか。

そして行き着いたのが、職能グループは「日々の業務を通じて成長できる仕組み」である、という考え方でした。グループの目的を、会社への直接的な貢献ではなく、メンバーの成長に置いたことで、所属するメンバーにとってメリットのある場所であると定義づけようと思いました。

成長できる仕組みについて

では、どうしたら成長できるんだろう。

仕組みとして機能させるためには、成長のメカニズムを明らかにして、それをルール化しなければなりません。そこで、まずは成長のプロセスを3つの要素に切り分けました。

1. 理解
2. 実践
3. 定着

さて、これをどのような手段で実行していくか。

本を読んだり、手本をなぞったり、練習したり、成長の手段はいろいろあります。これは個人として研鑽するための手法としては良いのですが、グループとしてこれを強制してしまうと、成長のための業務が増えることになってしまいます。業務上のリソースは、極力、サービス開発に向けて欲しいという前提を置いているので、これは最適な手段ではありません。この前提を元にして成長する仕組みを作るなら、業務を通じて成長してもらえるような機会を整えるという温度感が適切で、その点も考慮しなければならないと思いました。

1. 理解(価値観の共有)

成長するには、闇雲に進むのではなく、どうなりたいか、何をやりたいか、というような、目指すゴールについて、自分の中でイメージが持てることが重要です。自分はデザイナーとしてどういう在り方を目指すのか。そのために、どういう観点でデザインを捉え、どういったスキルを伸ばしていけば良いのか。

スキルに関して考える上で重視したのは、個別の知識や技術を軸にするのではなく、デザイナーという職能の普遍的な機能を価値軸として提案することでした。技術やツールが日々革新される現在においては、個別の知識・技術にフォーカスしすぎると、トレンドや環境変化に左右されやすいと思うからです。

デザインには、日々業務として関わっているWebサービスのみならず、多様な文脈で、長い歴史を経て育まれてきた普遍的な価値観や発明の蓄積があります。グループの中心に据える価値軸の抽象度を高めることにより、Webサービスという分野に限定したデザインではなく、より大きな視点で、デザインという文脈に目を向けてほしいと思いました。

以下は、業務の流れをベースにしながら、デザイナーという職能の機能を分解したものです。

課題・目的を見極め
アイデアに姿を与え
その要件を体系化し
具現化する事により
人々に価値を届ける

もちろん、これ以外にもデザイナーの職はいろいろな視点がありますが、業務を通じて成長をする仕組みなので、実際の業務スタイルに沿った要件に絞り込んでまとめています。これをグループの価値軸としてより強固に結びつけるため、人事評価の際の専門スキルの評価軸としました。

課題・目的を見極め → 企画
アイデアに姿を与え → 表現
その要件を体系化し → 設計
具現化する事により → 技術
人々に価値を届ける → 影響

今回は組織づくりに関する話題なので、個々の評価軸の詳細については触れませんが、執筆時点ではこのような構成になっています。

これで、プロダクト開発において、どういう観点・スキルでデザインの専門性を発揮すればよいかという軸が定まりました。ゴールに向かって、どのような歩き方をすればよいかという型が提供されたので、次は、どのようなゴールを設定するかです。

これに関しては、憧れのデザイナーのキャリアパスや制作物を意識するのが分かりやすいと思いますが、やはり、同じ環境に身を置くデザイナーから刺激が受けられるとスムーズです。どういう取り組みや価値観を良しとするか、その指標やヒントをグループから提供できないか。その一助とするべく始めたのが、ベストデザイン賞です。

ベストデザイン賞

ベストデザイン賞は、半年に一度、その期に発表されたサービス、グッズ、コーポレートツールなど、デザイナーが関わったあらゆる制作物から、最も優れたデザインとその取り組みを選出する取り組みです。優秀作品には、納会の壇上にて表彰を行い、グループウェアを利用して、全社にその講評を公開します。品質の高いデザインを見て刺激を受けるだけでなく、同じ環境でデザインをする仲間が、工夫したり、こだわったポイントを知ることが出来るので、日々の業務を行う上で参考にしやすく、自身のスキルアップに活かしてもらいたいと思っています。

ちなみに、この賞では、サービス・事業的なインパクトの大小や影響度ではなく、クリエイティブの品質やデザイン活用のアイデア、取り組みの先進性など、デザインにフォーカスした価値軸で選定を行っています。そのため、大型プロダクトを退けて、細かな見え方の改善が大賞を受賞することもあり、毎回、どのデザインが受賞するのか、目が話せない展開となっています。

2. 実践(挑戦と成長の後押し)

目指すところ、やりたいことが見えてきたら、今度は業務を通じてそれを実践するステップです。

経験豊富なデザイナーの元で下積みをし、その仕事を間近で見ながら一人前になっていく、みたいな話をよく聞きますが、技術を習得しようとする場合、徒弟制度のような仕組みは有効だと思います。知識や技術を、実戦の中でどう活かしていくかは、やはり座学よりも、時間と文脈を共有する師匠の日々の振る舞いの中から学べる事が多く、有効な師弟関係を業務の枠組みの中でいかに構築できるかも、実践の仕組みを作るうえで、大きなポイントになりそうです。

日々の業務を通じて成長するためには、業務上の試行錯誤や制作に対して、自分に近い立場から、議論をしたり、模範となるべき振る舞いを見せてくれる、師匠のような存在が居てくれると、目の前の仕事が、無味乾燥な作業ではなく、挑戦のための有用な機会になります。

かつて、はてなでは、デザイングループ全体を対象として、サービス横断のデザインレビューを行なっていた事もあるのですが、なかなか深い議論に発展させる事が難しく、サービスの特性までは踏み込まない、基本要件のレビューのようなものになっていました。精度の高いレビューをするためには、それぞれのサービスやメンバーに対する深い理解が必要になるので、自分の担当と異なるサービスをレビューする場合など、どうしても本質まで踏み込んだ議論がしにくいのです。

しかし、前提を共有する者同士であれば、踏み込んだ議論ができます。サービスに対して、自分より深い理解を持ち、経験も豊富な師匠であれば、レビューを通じて、これまでに無かった視点を与えてくれるでしょう。自分と近い立場にあって、日々取り組んでいるテーマの文脈を共有している事は、業務を通じて成長できる師弟関係を構築する前提として、とても重要です。

では、誰が師匠になるかですが、各サービスのリードデザイナーにその役割を担ってもらうことにしました。はてなでは、サービス毎に、リードデザイナーという役割を置いています。これは、サービスデザインの一貫性と品質を担保することを目的とした制度ですが、リードデザイナーは、デザインレビューなど、業務を通じて他のデザイナーと接する機会が多く、日々の成長を後押しする役割として適任だと思いました。

3. 定着(場と機会の提供)

日々の試行錯誤は、客観的に整理することで、経験を自分の中に定着させることが出来ます。自分なりに悩み、工夫を重ねた経験の蓄積は、何者にも代え難い成長の糧となります。プロダクトの制作が一段落した頃に、制作について悩んだり工夫したことを振り返り、自分の経験として定着させる機会があると良さそうです。

振り返りは、自分だけで行うのも良いですが、やはり、誰かに見てもらい、聞いてもらい、その反響を受け取ることが、モチベーションの向上に繋がります。また、第三者に説明する前提で整理することで、内容を客観視出来て、定着の精度も上がります。なので、グループとして、第三者に向けて日々の試行錯誤をアウトプットする場と機会を提供することで、メンバーの経験の定着を後押し出来ないかと思いました。そのための仕組みが、定例イベントデザイングループブログです。

Hatena Design Hour

定例イベントは、Hatena Design Hour といいます。このイベントは、プロダクトの背後にある、ものづくりの試行錯誤や創意工夫の物語にフォーカスし、作り手の口から、そのプロダクトの見どころやデザインのこだわりを語ってもらおうというイベントです。GMOペパボさんと共催したデザイン山アワーも含めると、もう9回も続く定例イベントとなっています。

なお、Hatena Design Hour のコンセプトについては、以前、ブログ記事にまとめていました。よければ合わせてご覧ください。

mnnr.hatenablog.com

デザイングループブログは、はてなデザイングループの情報発信の場として運営しています。イベントの情報をお知らせしたり、はてなが関わったプロダクトをポートフォリオとしてまとめたり、デザイナーの取り組みを集約する場所として位置づけています。メンバーは、ここを、日々のデザインに関するアウトプットに利用することが出来ます。

デザインに関する知見のアウトプットを、個人ブログで書くべきか、会社のブログで書くべきか、という議論はあると思いますが、個人的には、どちらでも良いと思っています。ただ、業務で制作したものについてまとめる時には、社内外の関係者にチェックを依頼するなどの事前準備が必要になるので、予めレビューの仕組みが整備された会社のブログで書けるとスムーズかなと思います。

なお、デザイングループブログは、具体的なデザイン事例の話だけでなく、メンバーの関心事など、気軽に読める内容になっていますので、ぜひ読んでみてください。

design.hatenastaff.com

成長のサイクルをまわす

このように、成長のプロセスを、理解、実践、定着と分解し、いろいろな施策を考えては、あれこれやってみています。しかし、個別の施策以上に重要なのは、プロセスの一部に人事評価と賞という会社の行事が組み込まれていることで、理解→実践→定着→理解・・・と、半年周期で成長のサイクルがまわり続けるようになっているところだと思います。

成長のサイクルが6ヶ月で一回転する

ゴールを見極め、試行錯誤や挑戦を行い、それを振り返ることで定着させ、より高いゴールを目指していく。目の前の仕事を、ただ繰り返すのではなく、半年ごとに、そういった視点でもって業務に取り組むことで、特別な学習の機会を設けずとも、業務を通じて成長することが出来る

まだまだ理想を完全な形で実現できてはいませんが、そういった仕組みになるよう、これからもブラッシュアップを続けて行きたいと思います。

最後に

あなたの組織づくりの話も聞きたいです。よかったら聞かせて頂けませんか。

今回の内容は、以前、Hatena Design Hour #5 にて、「デザイングループのデザイン」というテーマで発表をさせて頂きました。スライドは以下にアップロードしていますので、よければこちらもご覧ください。発表用スライドなので、注釈がないと分かりにくいかもしれませんが。

データの質感

情報にもモノと同質の「所有する喜び」があって良いんじゃないか。

本も、ニュースも、音楽も、デジタルデータとして購入する事が多くなった。かつては、発売日にお店まで時間をかけて買いに行ったものだけど、今や、どこにも出かけること無く、ダウンロードで手に入れる事ができる。場所も取らず、楽しんだ後に保管する場所にも困らない。購入や保管に関する様々な面倒から解放されて、気軽にコンテンツを楽しむ事ができる。これは、とても大きな環境変化だと思う。

しかし、音楽というコンテンツだけでなく、音楽を記録した媒体やブックレットなどの付属品まで含めて、パッケージとして「音楽を買いたい」と思うことがある。僕たちは、データとしてコンテンツを買うようになってから、コンテンツ以外の要素からも何らかの満足を得ていたことに改めて気づかされた。

モノは手に取ることができる。コンテンツそのものに対する感動とは別に、手触りから伝わる喜びがある。それに対して、データは愛着や所有する喜びが希薄だ。データは手に取る事ができないから、所有している実感がない。もし、モノへの愛着が、対象を手に取ることによって生まれる感情だとしたら、形を持たないデータには、愛着を感じることは無いのだろうか。

僕たちは、コンテンツを体験することで芽生えた感情を、触れる、など、また別軸の身体感覚から刺激が加わることで、その印象をより強固なものにしているのかもしれない。音楽というコンテンツを体験し、パッケージやブックレットを手に取って、モノとしての質感を身体的に感じることで、その体験、心の動きが身体的に強く印象付けられ、愛着が生まれる、という感じ。だとすると、コンテンツに、何らかの質感が伴っていることが、愛着を感じる一つの要件であると考えることが出来る。

では、質感とは何なのか。もし、質感が、手に触れる、目で感じる、など、身体的な知覚行為そのものではなくて、その結果、心に生まれる感覚を指すのであれば、モノとしての形を持たなくとも、そこに質感が生まれることはありそうだ。例えば、昔好きだった音楽を久しぶりに聴いた時、その当時の思い出や感情が強烈に蘇ってくることがある。その当時の身体的な感覚が瞬間的に戻ってくるような、そんな感じ。情報としての記憶というより、もっと質感を伴ったものだ。この音楽をライブラリから削除しなければならないとしたら、何かしら、躊躇する気持ちが芽生えるんじゃないか。その感情は、愛着とはいえないだろうか。

形を持たないものが身体的感覚をもたらす例、他にないかな、って思ったら、テレビゲームがそうだった。ゲームは情報によって描写されるもので、実体を持たない。なのに、高い所から落ちると、ゾッとするし、危うい足場を行くときは、思わず手に汗を握る。急カーブを曲がるときには、なぜか身体が横に傾いてしまう。『桜井政博のゲームについて思うこと』で、桜井さんが「画面上の何かを操作できる。ただそれだけで、本当は重たさも何もないところに生理感覚を作る」と表現されているけど、ゲームは、視覚的にコンテンツを楽しむのと同時に身体感覚も伴っている。

モノでなくても、そこに質感は生まれるし、愛着も生まれる。情報にも「所有する喜び」が生まれる余地はある。情報そのものに対する評価や感情も重要だけど、同時に、その感情を定着される何かが設計されているかどうかが、ポイントになるのかもしれない。