そういえば、1円の買い物ってしたのって、生まれて初めてかもしれないな。
1円ってお釣りとして受け取るだけで、1円の商品を買った事は、多分、これまでにない。レジで1円を請求された時、僕は何となく新鮮な気持ちになった。
リニューアルした『広告』の創刊号は1円。この号は、価値について特集している。当然ながら1円以上の価値がある骨太な内容。取引の本質は価値の交換だと思うけど、価格=価値ではないと改めて気付かせてくれる試みで、とても面白かった。
鹿くんがよく「並盛と中盛と大盛が同じ料金なんて絶対おかしいよ」ってつぶやいているけど、蕎麦の原価なんて高が知れてるし、作るのも簡単で調理に費やす労力も変わらないのだから、同じ料金にして客に喜んでもらう方が良いという判断だろうか。コストの総量が価値ではなく、蕎麦を食べる満足感が価値として提供されるので、その対価は一律であるという考え方もできる。価格って面白い。
以前、通販会社でバイヤーをしていた時、「価格はメッセージだ」と社長に教えられたことがある。例えば、999円という値段には、1000円を切りましたよ!というメッセージが込められている。4桁で当たり前なのに、3桁の領域まで押し下げてきたインパクト。単純に原価に一定の利益率を乗せたものではないし、すると、もしかすると原価は999円を超えていて、赤字なのかもしれない。でも、この値段を提示することに意義がある。百均も分かりやすい事例だ。原価にはかなりバラツキがあるけど、いろんなものが全部100円、ワンコインで買えてしまうんですよ、というのがメッセージであり、事業コンセプトの主軸にもなっている。
価格について向き合うことは、価値と向き合うことだ。提供される価値に対して対価を払う時、そこではどのような価値の交換が行われているのか、考えてみると面白い。